屈折率による厚みの変化

こちらが近視用レンズ、


こちらが遠視用レンズの断面図です。(便宜上、断面を黒く塗っています)


近視の場合、光学中心と呼ばれるレンズの中央が薄く、縁にいくほど厚くなります。
逆に遠視の場合、中央が厚く、縁にいくほど薄くなります。

レンズの厚みは、「レンズ度数」「フレームサイズ」「瞳孔間距離」といった条件が同じであれば「屈折率」の高いほうが薄くなります。
基本となる屈折率が「1.523 (1.50)」、プラスチックレンズで最も薄くなるものが「1.76」、ガラスレンズで最も薄くなるものが「1.90」です。
屈折率が高くなるにつれて、レンズの価格も上がっていくのが普通です。

度数が強い場合、「レンズが厚くなりますよ」ということで、高屈折のレンズをすすめるお店が多いのが実情です。
しかし、子供用メガネの場合は、成人用のメガネほど厚い仕上がりにはならないことが多いものです。
近視と遠視、それぞれの場合にわけて説明してみましょう。


●近視の場合
上の画像のように、近視のレンズは中央から周辺部に向かって厚みが増していきます。
メガネフレームのレンズサイズ(玉型といいます)が大きければ大きいほど、レンズ周辺部まで必要になりますので、縁の厚い仕上がりになります。
一方、子供用メガネの場合は、概して小さめの玉型になることが多いですから、レンズ周辺部の厚い箇所を使わなくても済むことになります。

つまり、
一般的には高屈折レンズを使わなければかなりの厚みが出てしまうような度数であっても、子供用メガネの小さな玉型であれば、標準的な屈折率や中屈折率のレンズでも、そこそこの厚みに収まるわけです。


★実際の厚み・重さの比較例★ 
近視の場合

42□13 天地幅28ミリのフレームを使用した場合。


フレームの幾何学中心とレンズの光学中心が一致している状態での最大縁厚と重さを比較。
ASとあるのは外面非球面レンズ、その他は球面レンズ。



46□15 天地幅30ミリのフレームを使用した場合。


フレームの幾何学中心とレンズの光学中心が一致している状態での最大縁厚と重さを比較。
ASとあるのは外面非球面レンズ、その他は球面レンズ。


※上記の数値は、レンズのメーカーやレンズのカーブによって、多少に違いが生じますので、絶対的な数値ではありません。
あくまでも、同じ枠で同じレンズでも、レンズ径を変えたり、屈折率を変えたりするとどうなるかという相互の比較のための参考例としてご覧いただければ幸いです。



遠視の場合
冒頭の画像のように、遠視のレンズは中央が一番厚くなります。
レンズ中央部を使わないわけにはいきませんから、そのままでは近視用のレンズのように玉型の大小は中央の厚みに影響を与えません。
しかし、ちょっとした工夫で、厚みを減らすことが可能です。

通常、メガネのレンズは、丸い生地で送られてきます(下画像左側)。
これを玉型に合わせて削っていくのです(下画像右側)。


遠視のレンズは、この丸い生地の直径が大きければ大きいほど、同じ度数であっても中央部の厚みが増すという特徴があります。


逆に言うと、同じ度数であれば、丸い生地の直径が小さければ小さいほど、レンズ中央部は薄くなるのです。
したがって「最低限どれだけの生地径があれば、レンズをフレームにはめることができるか」を調べ、そのレンズ生地径で注文をすれば、中央部の厚みを最小限度に抑えることが可能なのです。
これを「
径指定(けいしてい)」といいます(外径指定、小径指定、とも言います)。

最低限必要なレンズ生地径は、フレームサイズ(玉型サイズ+鼻幅)と瞳孔間距離によって決まりますので、フレーム選びも重要になります。




上図はどちらも屈折率1.50、度数も同じ(+3.00D)ですが、レンズ生地径が異なるレンズの断面です。
左側が標準生地径65mm(普通に注文した場合に送られてくる生地径)、右側が55mmの生地径で注文したものです。
中央部の厚みは、65mm径が4.3mm、55mm径が3.3mmです。
同じ度数なのに、1mmも違います。(厚みはメーカーによって多少異なります)

ちなみに、65mm径で屈折率1.60のレンズを頼んだときの中央部の厚みは3.8mmになります。
つまり、
屈折率の高いレンズを購入しなくても、径指定をすることで厚みを減少させることが可能なのです。


実際の厚み・重さの比較例 
遠視の場合

42□13 天地幅28ミリのフレームを使用した場合。


フレームの幾何学中心とレンズの光学中心が一致している状態での中心厚と重さを比較。
ASとあるのは外面非球面レンズ、その他は球面レンズ。
標準とは、径指定をしない場合です。




46□15 天地幅30ミリのフレームを使用した場合。


フレームの幾何学中心とレンズの光学中心が一致している状態での中心厚と重さを比較。
ASとあるのは外面非球面レンズ、その他は球面レンズ。
標準とは、径指定をしない場合です。



※上記の数値は、レンズのメーカーやレンズのカーブによって、多少に違いが生じますので、絶対的な数値ではありません。
あくまでも、同じ枠で同じレンズでも、レンズ径を変えたり、屈折率を変えたりするとどうなるかという相互の比較のための参考例としてご覧いただければ幸いです。


また、乱視のマイナス軸が90度に近い場合には、工場で横長のレンズに仕上げることにより、単なる径指定よりもさらに薄くなるのです。
これは、レンズメーカーによって「メッツ加工」「スライス加工」「シェイプ加工」など、いろいろな呼び方がありますが、子供メガネ研究会の会員店なら、どこでもこの加工でお作りすることができます。

なお、お子様のメガネで、近視矯正の凹レンズではなく、遠視矯正(遠視乱視の矯正)の凸レンズのメガネなのに、径指定のことをまったく説明しない店は、敬遠した方がよいでしょう。

遠視(遠視乱視)矯正のメガネだったら、店へ入るなり「おたくは径指定で、軽くて薄いレンズのメガネを作ることに熟達しておられますか」と聞いたらよいと思います。
それに対してあやふやな答えしか返ってこないようだったら、その店とは縁がなかったと思うのがよいでしょう。

枠やレンズの種類を問わず価格が一律という店の場合、径指定をすると店側のレンズコストが上がるので、径指定をあえてさぼる店があります。
(現実に本会会員の店の人間が、お子様の遠視矯正のメガネで他店で購入された、そういう「径指定をしていないことによる異常に厚いレンズのメガネ」を見たことがあります。)

メガネ店の知識や技術レベルには非常に差が大きいので、中には径指定のことを知らない店もあるでしょうし、知っていてもコスト削減を優先して、径指定をしない店もあるのでしょう。

誤解のないように申し添えておきますが、ここでは決して「高屈折レンズは必要ない」ということを申し上げているわけではありません。
「多少高くても、少しでも薄くなるレンズを選んであげたい」という保護者のかたも、たくさんおられます。
そこにつけこんで、細かな説明もなく「薄くなります」と言うだけで、高屈折レンズをすすめるお店は要注意です。

良心的なお店であれば、たとえば「こちらの屈折率なら厚みはこのくらい、こちらの屈折率なら厚みはこのくらいになります」といった具体的な数値を上げてレンズ選びのお手伝いをしてくれるはずです。
そうして納得された上で、高屈折レンズをお求めになるのであれば、無駄遣いのお買い物にはならないわけです。

子供メガネ研究会の会員店は、良心的なレンズ選びのお手伝いをいたします。




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